2017年5月28日

引退式


 約半世紀もの間、現役の純国産グライダーとして活躍を続けてきた東北大式Cumulusであったが、総飛行回数2万回を超えた頃からいつ引退させるかについての議論が繰り返し行われてきた。設計に絶対の自信を持ちながらも、製作当時新しく取り入れた接着剤の強度と寿命が未知であることから、早く引退すべきだとの声も上がっていた。また、東北大式Cumulusの引退後どうすべきかという議論においては、翼の荷重試験を行い、設計通りの強度が得られているか試してみたいという声もあがったが、そのままの姿で残してほしいという声が多くあり、壊さずに残されることとなった。

 

 静態保存に関しては、なるべく多くの人の目に触れるところで飾ってもらいたいという思いがあった。候補として仙台市科学館や仙台市博物館、仙台空港などがあがったが、いずれも展示スペースに限りがあり、県外にも視野を広げて展示場所を探したところ、青森県立三沢航空科学館に置かせていただけることになった。

 

 展示場所が決まったからには急いだほうがいいだろうと、引退式は2017年の5月28日日曜日と決まった。引退式の前の週には未だにCumulusに乗ったことのなかった現役部員のフライト、前日と当日には来賓のフライトと慌ただしく行われた。

 

 引退式当日はとても天候に恵まれた日であった。青空には積雲が浮かび、まさにCumulus日和であった。この日も来賓を主として数度のフライトが行われた。サーマルが発生し、Cumulusはまだ飛んでいたいという様であった。最終フライトでは前席にOB会長である櫻井氏が設計主任であった野田先生の写真をもって、後席にはキュムラス会の会長を務めた船木氏が搭乗し、最終フライトが行われた。思い残すことのない見事なフライトであった。着陸後は自然に拍手が沸き起こった。その後、機体の前で写真撮影を行い、B棟において引退セレモニーが行われた。

 

 引退セレモニーでは、各OBがCumulusとの思い出を語った。Cumulusの引退を記念し、乾杯は「Cumulus」というワインで行われた。

 

機体の前で記念撮影

引退記念式典は関宿滑空場のB棟で行われ、60名ほどのOBが集まった。

←飛行記録の最終頁

合計の飛行回数は21457発、合計飛行時間は1921時間56分であった。

2018年4月30日~11月30日

三沢航空科学博物館


  Cumulusの次の棲家を決定するべく、航空部OBは奔走した。仙台市科学館や仙台市博物館、仙台空港のみならず、全国の博物館・科学館などを探し回った。しかし、多くの博物館は所蔵品がいっぱいであり、受け入れることができないとのことであった。その中で受け入れを表明してくれたのが、三沢航空科学館の館長である。航空機の収集が趣味であり、Cumulusの受け入れに対して好意的であり、「吊るしたりすることなく、いつでも飛べるような姿でそっと置いておいて欲しい」という我々の願望も聴いてくれた。これで終の棲家が決定したかと思いきや、Cumulusの移設にブレーキがかかった。青森県庁の反対である。三沢航空科学館はリニューアルの最中であり、「青森県に関係のない所蔵物を整理する」との青森県庁の考えと合わなかったためである。このため、Cumulusの展示計画は白紙に戻ることとなる。その後も交渉が繰り返され、常設でなく半年限定の特設展示であれば良いということになり、半年間の三沢での展示が決まった。

 

 引退式翌日から早速三沢航空科学館への移設に向けたお色直しが行われた。機体のレジ番号はどの青色も合わず、特注で色をつくってもらい塗り直した。三沢への移設は順調に進み、展示後は報道各社に報道された。また、10月27日には「夢への挑戦―名機は学び舎から生まれた」と題して航空部OBの櫻井氏による講演会が行われた。

三沢航空科学館に展示されるCumulus。航研機の翼の下に翼をくぐらせる形で配置された。航空部OBおよび現役部員と記念撮影(2018年10月27日)。一番右が櫻井氏。

2020年度(予定)

博物館


 2019年4月現在、博物館への移設準備が進められている。

←Cumulusにて敬礼する佐藤一郎氏(後席)

Cumulusの製作から引退式までお世話になり、所沢航空発祥記念館への展示計画にも大いに貢献した。